東京高等裁判所 昭和37年(ネ)1766号 判決
控訴人等は本件土地及び建物の売買契約が成立したのは、控訴人等が訴外教会の代表者アンドラスを被控訴会社代表者に紹介し両者間に話が纒るよう尽力したことによるものであり、右のように控訴人等が提供した機縁によつて契約が成立した以上控訴人等が本件売買契約の成立を媒介したものに当ることが明かであるから被控訴人に対しても報酬請求権を有すると主張するので判断する。
不動産仲介業者のなす土地、建物の売買等の仲介は民事仲立といわれるものであり、依頼者との仲介契約の性質は民法上の準委任であると解するを相当とする。たゞ不動産仲介業者は商法上商人とされるから、同法第五百十二条により右仲介契約はつねに有償とされ、仲介業者は取引の当事者間に契約が成立した場合に、その依頼者に対し相当の報酬を請求し得るものと解すべきである。しかしながら右のように不動産仲介業者の仲介が準委任契約に基くものである以上当事者に対してはその仲介に際して、特に依頼を受けるとか、またはこれと同視すべき特段の事由のないかぎり当然に報酬を請求し得るものと解することはできない。商事仲立営業につき商法第五百五十条第二項が、仲立人の報酬は当事者双方平分してこれを負担すと規定しているのは、商事仲立人は同法第五百四十四条以下の規定により委託者のほかにその相手方に対しても特定の義務を負うものとされていることによるのであるから、右商法第五百五十条第二項の規定を民事仲立に類推適用することはできないものといわなければならない。また東京都内において宅地建物の売買の仲介については当然に依頼者及び非依頼者の双方に対し報酬を請求し得る慣習の存在することを肯認し得る証拠もない。この点に関する当審での鑑定人小寺源太郎の鑑定の結果及び証人小寺源太郎の証言は当裁判所の採用し難いところである。もつとも昭和二十八年十月一日東京都告示第九百九十八号によれば、宅地又は建物の売買又は交換の代理又は媒介をする場合の報酬の額は当該宅地又は建物につき取引の当事者(依頼者)の各一方につきそれぞれ取引額について次の限度を超えてはならない旨及び取引の当事者の一方を代理する場合において取引の相手方からも前項の報酬を受けるときはあらかじめその者の同意を得なければならないと規定しているが、右は行政的取締のために報酬の最高限度を定めたものに過ぎないから、右告示を根拠として媒介の場合においては依頼を受けない相手方に対してもその者の同意を要せずに当然に報酬を請求し得るものと解することもできない。
(伊藤 杉山 山本)